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飯尾醸造の酢と米を愛用する世界唯一の料理人リカルドと妻美穂。箸を持つ手の美しさに見惚れてしまうしまうリカルド・コモリと妻の美穂がいとなむ鮨割烹「西入る」。京都宮津にあるカウンター6席の店だが、「世界唯一の店」だと飯尾醸造五代目は言い切る。いったい何が世界唯一なのか。「酢を使ってもらっている鮨屋は国内外にたくさんあります。でも、米もおろしている鮨屋は西入るさんだけ」富士酢と、その原材料の丹後産コシヒカリを使っている鮨職人は、リカルドだけというのだ。富士酢を愛用する鮨職人は国内外に大勢いる。なのになぜリカルドだけが、富士酢と丹後産コシヒカリを使うことになったのか。そして、もうひとつ。リスボン(ポルトガル)生まれの料理人が、なぜ宮津に店をかまえたのか。人と人との不思議な縁をたどることにする。気晴らしの丹後行きがきっかけだった「20歳の頃から15年間リスボンの日本食店ではたらいていました」(リカルド)その店の料理人仲間だった美穂と結婚。日本料理と鮨を修業しようと9年前(2015年)に来日。各地の日本料理屋で研さんをつむ。「京都 杦 SEN」で修業しながら独立開業をめざし、京都市内で物件をさがしていた。「ところが、見通しがたたず、リカルドは落ちこんでいました」(美穂)息抜きに丹後へ行くことにした。てのしま修業時代の写真。左から二人目が店主の林亮平、右隣がリカルド。画像提供/西入るなぜ丹後だったのか。「丹後はいいところだ」と二人にすすめられていたからだ。ひとりは、青山の日本料理屋「てのしま」店主の林亮平。リカルドの元親方である。もうひとりは、パウロ・ドゥアルテ。京都市内でポルトガル菓子屋「カステラドパウロ」をいとなむポルトガル人。2020年冬、パウロは妻トモコと飯尾醸造のお酢蔵を見学。その後、飯尾が宮津市内でいとなむ「アチェート」で食事をしてかえった。パウロは、リカルドの物件さがしが難航していることも知っていた。だからこそ丹後へ、さらにいえば「飯尾醸造へ行っておいで」とつたえた。「丹後をサンセバスチャンにしたい」と飯尾彰浩。海の美しさはひけをとらない。のこるは美食だけ「丹後を美食の街にしたい」アチェートは、五代目が2017年に開業したレストランだ。宮津はかつて花街として栄えていた。五代目はその一画を購入。築120年の商家を改装し、アチェートをオープンした。アチェートの話はいずれどこかで。アチェートの、中庭をはさだんむこうに蔵がある。五代目はその蔵も改装した。鮨職人を誘致しようと考えていたからだ。お酢屋がなぜ飲食店を経営したり、鮨職人をよぼうとしたのか。「丹後をサンセバスチャンにしようと思っているからです」(五代目飯尾彰浩)サンセバスチャン。世界屈指の美食の街であり、リゾート地でもあるスペインの著名なリゾート地サンセバスチャン。スイーツ好きの間では、バスクチーズケーキの発祥地として知られている。ミシュランシェフを多く輩出している街でもある。美しい海と美味が、世界中のグルマンを魅了してやまないサンセバスチャン。五代目は、丹後を美食の街サンセバスチャンにしようと目論んでいた。丹後を再訪(後述)した2月下旬。大雪の宮津港を撮影するリカルド。画像提供/西入る丹後の美しい自然に感動した2022年2月、リカルドと美穂は丹後へむかった。「鮨屋がどうなったかを見てくれば」とトモコにいわれていたからだ。筆者も2月の丹後へ行ったことがある。舟屋で有名な伊根町を取材したのだが、仕事でなければ雪のない季節を選んだかもしれない。けれど、「リカルドの気が少しでもまぎれれば」という美穂の思いと、鮨屋を見るために丹後へむかった。「丹後は自然が豊かで、心がたかぶりました」(リカルド)結婚したばかりの、リスボン時代のコックコート姿の二人。画像提供/西入る1日目の夜は「魚菜料理 縄屋」で食事。吉岡幸宣がいとなむ店に、丹後の酒蔵「竹野酒造」の当主が食事に来ていた。翌日、当主に竹野酒造の酒蔵を案内してもらった。その足でアチェートへ。蔵に開業した鮨屋は撤退していた。居抜きになった蔵を見せてもらった。「リカルドが納得してくれるかどうかが一番重要でした」( 美穂)リスボンの日本食店時代のリカルド(左)と美穂(右)。画像提供/西入るすべてが希望どおりの物件だったひとりでオペレーションができる6人のカウンター席をリカルドはのぞんでいた。「『こじんまりとした蔵で、鮨をにぎりたい』とも話していました」( 美穂)丹後3日目。お酢蔵を五代目に案内してもらった。「昨日見せてもらった蔵をかしてくださいと飯尾さんにお願いしました」(リカルド)帰り際、富士酢プレミアムとコシヒカリをサンプルにもらってかえった。帰宅後、さっそく鮨をにぎった。「富士酢プレミアムは酸味だけでなく、喉越しがやわらかくて旨味もありました」(リカルド)案内してもらった、カウンター6席の居抜きにひと目惚れ。住居を丹後に移したコシヒカリと、富士酢でつくった鮨飯はどうだったか。「コシヒカリは粒がしっかりしていておいしかったです。酢そのものに旨味があるので、鮨飯もよりおいしくなります。魚が負けてしまうのではないか、というぐらいおいしかったです」( 美穂)10日後、丹後再訪。旅ではなく、住居の下見が目的だった。4月に丹後に引っ越し。6月に西入るをオープンさせた。地方に住むことに不安はなかったのだろうか。「はじめて丹後へ行った3日間、誰もがわたしたちを歓待してくれました」(美穂)移転して2年。排他的な雰囲気を感じたことは一度もなかった。次回は、リカルドと辻田浩之との出会いを紹介する。( 敬称略)リノベーションされてモダンな蔵にうまれかわった。2階にカウンター席がある(撮影/合田慎二、取材・文/中島茂信)【西入る】京都府宮津市新浜1968080-8370-4537営業/18:00∼定休日/水木曜https://nishiiru.com/【飯尾醸造】京都府宮津市小田宿野3730772-25-0015営業/9:00∼12:00、13:00∼17:00定休日/土日祝日、特別な休業ありお酢蔵を見学できます(要予約)詳細はHPをご覧くださいhttps://www.iio-jozo.co.jp/この人が好きやねんバックナンバー 【飯尾醸造】
京都府宮津市小田宿野373
0772-25-0015
営業/9:00〜12:00、13:00〜17:00
定休日/土日祝日、特別な休業あり
お酢蔵を見学できます(要予約)
詳細はHPをご覧ください
https://www.iio-jozo.co.jp/
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