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【二月五日】 |
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午前五時〜七時まで十五日間続く日本一の寒稽古に参加している。めちゃめちゃ弱い自分もちょこっとよかった自分もいっぱい感じさせてくれる時間を持てることに感謝している。二月号のモノマガジンが唐がらしの特集を組んだ。私の「たかの爪」の部分を一部抜き出してみたいと思います。
昔から美味しいものは堺の港から入ってきた。西国からの 高野参詣客で賑わう旧高野街道はそのまま味の道ともなった。唐辛子もそのひとつ。特に、日本の味として長く親しまれてきた鷹の爪は稲作に適していないこの地によく根付き特産品となる。だが、それも昭和三十年代までで、その後は急速に減少してしまう。
今、世に出回っている鷹の爪と称されるほとんどが、実は輸入品や他の品種である。鷹の爪の純粋種は摘み取るのに手間がかかる。そのため、都市近郊の野菜栽培に農家が転じてしまったのだ。宅地化も進み、堺の地もニュータウンと化してしまった。「昔は秋になると近郊の野は鷹の爪で真っ赤になったものです。慶長の頃の中国を経て日本に入ってきた唐辛子を日本人は独自のとらえ方をしたと思います。直接口に入れず、お漬け物につけると香りと辛みが出てまいります。千枚漬けに小粒の赤い実とみどりの軸の鷹の爪…。目で美しさを楽しんだ日本人の文化をすばらしいと思うのです。」(現社長辻田悦子さん)。
辛みを目で味わう-----。
繊細な美しさを持った鷹の爪の原種を辻田商店は明治三十五年の創業以来一〇〇年間、管理保存し続けてきた。辻田商店の最高とは決して価格ではない。昔からの味を絶やさぬよう守ってきた姿勢が、図らずも最高の味を伝える結果となった。たとえば「柚のす」と名付けられた柚子の絞り汁は通常の接木栽培のものではなく、樹齢百年ものの実生のゆずより搾汁されたもの一〇〇%。収穫を毎年手伝うことで今でもわずかずつだが世に出すことに成功している。
Text: Yumi Horinaka
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