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【平成十九年二月】 |
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寒行十二日目終了。
ひたむきに寒行にうちこむ子供達、学生、
御師匠様の色あせることのない
「初々しさ」と「透きとおった感性」
に感動しています。
あと残り三日。
厳しい寒行の中だからこそ感じる
感覚を大切にしたいと思っています。
【 汲 む 】 ーY・Y−
大人になるというのは
すれっからしになることだと
思い込んでいた少女の頃
立居振舞の美しい
発音の正確な
素敵な女のひとと会いました
そのひとは私の背のびをみすかすように
なにげない話にいいました
初々しさが大切なの
人に対しても世の中に対しても
人を人とも思わなくなったとき 堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを隠そうとしても
隠せなくなった人を何人も見ました
私はどきんとし そして深く悟りました
大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ
子供の悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それらを鍛える必要はすこしもなかったのだな
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと…
わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました
たちかえり
今もときどきその意味を
ひっそり汲むことがあるのです
詩人 茨木のり子
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